売れない保険屋さん

セールストークのネタになれば。

~第47話:赤信号のプルデンシャル人生~社会に出たらパンツを脱ぎなさい。

社会に出たらパンツを脱ぎなさい。

~第47話:赤信号のプルデンシャル人生~

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「応援してくれる人」は私の心の隙間を埋めた。完全に落ちた。私はノリピーに依存してしまったのだ。プルデンシャルでの営業活動は正直ツラかった。保険の営業はまず、断られる事から始まる。同期や後輩には旧友に「久々に飯を食おう」だなんてアポ入れをしているアホなライフプランナー(プルデンシャルの営業マンの事)もいたがそれは落ち目で自信と自分の仕事に対してプライド、やる気、根性を無くし、「逃げている」証拠だ。そうなると相手は「飯を食う」ために来るのであって、「保険の話を聞く」ために来るのではない。その時点でその見込み客はアウトなのだ。そこから保険の話に切り替えても相手は疑心暗鬼、絶対にアウトなのだ。だいたい飯を食う時間がもったいないし、お金だって掛かるんだよ、ライフプランナーは自営業者なのだ。間違ってはいけない、目的は「保険の話をするアポ入れ」だ。飯を食おうだなんて言い訳するな、そして逃げるんじゃない。どうせ断られるんだよ、そういうのは!

と、プルデンシャルを辞めた根性なしの人間が偉そうにしゃべっておりますが、それはとりあえず置いといて。

旧友や知人に断られまくった上、アイツは変な宗教にハマったなどと噂されつつも頑張らないといけない。もちろんプルデンシャルの営業マン全員がツラい思いをしているのだから私だけではないのだが、やはりパンツを脱いだ結果、メキメキ数字を挙げて行き、チヤホヤされた前職時代はまさに輝かしい過去の栄光だ。井の中の蛙大海を知らず、パンツの中のおティンティン現実を知る。

ただ、まだまだイケると信じていた。一攫千金は掴んでいないし借金だって残ってる。この業界は宝くじを当てるより確率は高いハズだ。それにそこそこの成績だって挙がっているし、私は絶対に成功する。応援してくれるノリピーの為にも頑張るのだ。

正直、給料は上がって行った。ノリピーとなんとなく同棲っぽくなった頃は私にしては絶頂に近かったかもしれない。毎月100万超えのお金が振り込まれてくる。もちろん法人の契約など決まれば月200万超えなどザラだった。年収も前職を軽く超え、とりあえずは転職は成功したかと思えた。もちろん前職ほどめんどくさい上司や徹夜もなく、けっこう平日はノンビリしてて、前職と比べると有り余るかと思えるほど自分の時間を確保でき、本当に最高の仕事かと思えた。

~ノリピーとの決断~

ついに私達は入籍し、夫婦となった。給料は上がって行くからこれなら大丈夫と思ったし、何より支えてくれるノリピーはドライだけどもありがたい存在だった。そして日曜だけは休むと決め、ノリピーとパチンコ行ったりお高いレストランに行ったり身の丈を超えた贅沢をし始めた。ノリピーもまだ働いていたからダブルインカムでとても贅沢で楽しい時間だった。つまりお金はふんだんにあったのだ、いや、お金があるように見えただけだった。

私はアホだった。妻であるノリピーに借金を隠して入籍したのだ。給料が上がったならば少しでも返すべきだった。そんなの当たり前だろ!と思われるがそこがコワいところで、人間の本性なのかもしれない。返すのがもったい、いつでも稼げるという感覚に陥る。冷静に振り返ると金銭感覚がマヒし始めていたのだ。

贅沢な生活を送る毎日と反比例するかのように「見込み客」の数はどんどんと減っていく。それでも所長や先輩たちからも「アイツは大丈夫」と太鼓判を押され、自分がなんだか偉くなった気分にもなってくる。「ああ、俺は大丈夫、いつでも稼げるから」などと今考えると顔が真っ赤になるほど、死にたくなるほど恥ずかしいような妙な思考回路になって行った。給料は相変わらず高いのだ、完全に赤信号が点灯していたにも関わらず。

もうすぐプルデンシャル人生が終わる事に気付きもせず。

 

見込み客が減って行く事を焦らなかった。

そんな現実を見ようとしなかった。

「私なら大丈夫」

いずれまた爆発するさ、などと甘い考えがよぎる。

一攫千金を掴めばいいワケではない。

 

この業界は、一攫千金を掴み「続けなければ」生き抜けないのだ。

 

しかも一生だ。

 

さすがにもうすぐ終わるけど、あとちょっと続く。

月末月初は忙しいから更新サボるかも~。