売れない保険屋さん

セールストークのネタになれば。

~第45話:絶望のパンツオールスター~社会に出たらパンツを脱ぎなさい。

~社会に出たらパンツを脱ぎなさい。

~第45話:絶望のパンツオールスター

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(・・後がない!)

ボブ子と会ったのは土曜日の昼下がり。残す猶予はあとわずか。月曜の朝9時までに契約書類を1件以上、作成し提出できなければここまで紡ぎ繋いだ「連続挙績」が途切れる。間違いなく気持ちも切れるだろうし、一度失速した後の再加速は難しいと感じていた。

(あわてるな、あと40時間くらいある)

女王・ボブ子と連続で倒れ、9回裏2アウト。次のバッターはバツ子かノリピー。もちろんまだアポすら入っていない。期待のボブ子が空振り三振で終わった直後だが気落ちするヒマなどない。こちとら断られるのは慣れているのさ。さあアポ入れだ。

「もしもし?」

「あ、バツ子、元気?」

よし、バツ子から行くぞ。前職時代の私の業務をこなし、二人三脚で喜怒哀楽、紆余曲折、厳しい仕事を乗り越えて来た相棒、すなわちパートナーだったオンナだ。夜もコミュニケーションを怠らず、業務指導と称して変態プレイ(ソフトなヤツ)だって結構な頻度でやって来たし、最終的には当時の私の上司である支社長とデキたオンナで、高額な腕時計やアクセサリーを買ってもらっては速攻、質屋に流しては現金化していた狡猾なオンナだ。つまりこいつは金がない。生活だってキツイような事を言ってたし、とても保険料を払えるような相手ではなかったが、そんな相手こそ必勝だ。金に目がない相手には必殺技を出す。私には禁断の秘策があった。

 「200%くらいお金増える保険あるけど」

最終奥義、ドル爆弾だ。プルデンシャル生命が誇る最終兵器、「米ドル特殊養老保険」、今話題の刈り上げ坊ちゃんもビックリお手上げ間違いナシの一品だ。

(商品売りになるな)

所長や支社長から口酸っぱく言われ続けて来た言葉だ。我々のミッションは1人でも多くの人々に生命保険の大切さを伝え、間違った生命保険の入り方をしている多くの人々に気付いてもらい、そして多くの世帯を救う事。「商品売り」は他の生保レディや生保マンと変わらない。プルデンシャルは違うのだ。

とか・・・きれいごと言ってんじゃねーよ!保険売れなきゃ食って行けねーよ!つまりは「黙ってても売れる商品に頼るな」って事なんだけど、この際仕方ねーんだよおお!

「え?そんなのあるの?」

(食いついた!)

「会って話すよ、今日の夜から時間ある?」

「夜は友達と飲みに行くし、明日も用事ある」

(やべえ!こいつはやべえ!でも慌てるな!)

「ふーん、そうか。俺も結構忙しくてさ。」

「へえ、頑張ってるのね~」

(どっか絶対に空いてるハズ!)

「まあね、それなら明日の朝か昼か夕方か夜なら空いてるけど、どう?」

「昼前と夜なら空いてるよ~」

(ビンゴ!)

「用事って何?」

「友達とランチ~」

そうだろ?所詮そんなもんなんだよ、日曜のオンナの予定なんて。朝か昼か夕方か夜って事は俺なんか一日中空いてるって事なんだよ、ヒマで悪かったな!それに夜に飲む相手と昼はランチだと?その相手も紹介しろ!

「そっか、んじゃ明日の11時にあそこのファミレスでどう?」

「いいよ~」

よし!なんとかなる、きっとなる。幸いにして生年月日などは知っている。こんな事もあろうかと退職前にそれとなく誕生日などは聞いていたし今からプルデンシャルに帰って設計だ。何しろいきなりプランを提示する必要がある。

 通常のプランニングとは違い、「商品売り」だからプランと申込書さえあればなんとかなる。申し込みまでいきなり行けたらいいけど、小一時間ではそこまではムリだ。申し込みは昼に会ってその日の夜に掛けよう。

そうしてボブ子敗退から翌日、勝負の日曜が訪れる。泣いても笑ってもあと1日、バツ子、こいつで最後だ。希望はある。絶対いける、こいつは落とす!まずは午前中の1時間でプランに対して納得してもらわないといけない。

「久しぶり~元気~?」

派遣だったバツ子はその後、会社を変え、なかなかの大手建築会社に派遣されていた。そこでの話や私が退職した後の話とかぺちゃくちゃ話してくる・・・!

(時間がねえんだよ!)

焦る気持ちを抑えながらまずは場を温める必要もあるため、30分は話を聞いた。

(もう限界だ)

これは米ドルだから外貨に対する懸念を払拭する必要もあるのだ。ラスト30分、果たして時間が足りるか?こうなりゃ無理やり説明開始だ。

「・・スゴイね。これ。入ろうかな」

(いきなり落ちた!さすがドル爆弾!)

「ん、いくらから頑張る?(保険料いくらで行く?)」

「最低はいくらから?」

「毎月80ドル、今なら7,800円くらいかな。最初はムリする必要はないよ」

「え、いや、ムリ」

なあにいいいいい!?無理だと?将来、この80ドルが160ドルになるんだぞ?お前わかってんのか!?だいたいどれだけ飲み代だとかランチだとかに金使ってんだよ、だいたいお前、俺とホテル行ったり飯食った時ですら1円も払わなかったぢゃねーか!

他にも方法があった。満期を65から70歳にズラすとかもあったけど、時間が足りなかった。こんな時は金だ。保険料が落としどころだ。

「いくらなら大丈夫?」

「月5,000円が限界かな」

わかった、それでも1件は1件だ、今夜また会ってくれとお願いしてその場は解散し、慌ててプランを作り変え、夜に挑む。同じドル建ての保険でも50ドル(4,900円くらい)で行ける別の保険種類に切り替え、これでクロージングだ。

夜、約束のファミレスでバツ子を待つ。遅い。遅いぞバツ子、もう約束の19時を超えたぞ。どうしたバツ子?そんな時に携帯が鳴る。

「ごめーん、うちのワンコが体調崩しちゃって。」

「今夜は行けないよ、また連絡して~」

何卒ご自愛ください。ワンコは大事な家族だしね。あれ?飼ってたのニャンコじゃなかったっけ?まあいいや、そしてついに終わった。途切れてしまった。

(商品売りじゃあダメか・・・反省)

と思う間もなく、書類提出まであと13時間くらいある。望みは薄いが延長戦に掛けよう。なんで俺はいつも行動が遅いんだ。 こうなる事も予測してなんでアポを入れてないんだ。

誰もがうらやむ社長夫人の座を捨て、地べたで地を行くマイナー人生を選んだオンナ、パチンカス出身、こうなったのはいったい誰のせいだ、私が選ぶ最強のパンツオールスター4番。

 

スーパードライなオンナ、ノリピー、最後のチャンスをください。

 

そろそろパンツも終わるので文章量アップしながら・・・

毎日24時更新もなかなかキツイのだw

続く

 

※後日、もちろんバツ子は加入しました。商品売りサイコーww

※今の「米ドル特殊養老保険」は200%まではなりませんが、それでも最強の部類ですよ、詳しくは「ざっくりFP知識」をご確認ください。

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