売れない保険屋さん

セールストークのネタになれば。

~第19話:ノリP登場~社会に出たらパンツを脱ぎなさい。

⑲社会に出たらパンツを脱ぎなさい。

~第19話:ノリP登場~

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そのエリア最大のクライアントに再び入り込むのはもう無理かなと諦めていた。

門前払いのような邪険な扱いは受けなかったけど、どうしても発注権を持つキーマンまで辿り付けない。

訪問する意味もないのだが、窓口のおねーちゃんが酒井法子、ノリピーにそっくりでかわいくて「その子に会う」ことだけを目標に足しげく訪問した。

これは仕事じゃない、ノリピーに会うのだ。

(またアイツ、ノリピー目当てで来てるよ)

そんなヒソヒソ話が聞こえそうなミジメな訪問はとても辛いのだけど、ノリピーに会う為に私は行くのだと思えばなんだか頑張れる気もした。

そんな空振り訪問を2ヶ月ほど続けて行き、のりピーと少しずつ打ち解けて来た。

「この前、婚約したんですよ~」

「おお、おめでとうございます!」

「結婚式は来年の5月です」

「じゃあ花の独身生活も半年ちょっとですね~」

そうか、ノリピーはまだ26歳なのにあと半年ちょっとで人妻確定なのか。誰だこんなかわいいノリピーを射止めた男は。きっとかっこいい男なんだろう。まあ、お気を確かに、いや、お幸せに。相手がどんなヤツかは知らないけどノリピーはその男とにゃんにゃんしてるんだな、夜はマンモスラッキーでいただきマンモス、マンピーヤッピーオッパッピーだなんてウラヤマシイけどだいたい私は結婚願望なんかないしまだまだ遊び足りないのだ。もっと遊んで遊んでボチボチ結婚したいんだ。そんな事より仕事をなんとかしてくれ。

そんな私の心からの祝福の気持ちがノリピーに届いたのだろうか、小さな案件だが見積りの依頼を出してくれた。通い出して3カ月経過、ようやくの案件である。

とは言え、もちろん参考の見積りだった。現在入り込んでいるライバル会社の見積りが適正かどうか見積りを取ってみろと指示が出たのだと想像する。それ以来、少しずつ見積り依頼をもらい、提出し、ノリピーとおしゃべりして帰るという環境が出来上がって行った。もちろん受注はナシだけど、少しだけそのクライアントの内部が見えて来た感じもあった。

そしてある日、大型案件の見積り依頼があった。見積りだって作るのはけっこうな時間が掛かるし、そろそろ何か受注させてほしいと考えてた矢先だったのでここが勝負どころ、と踏んで設計部門長、工場長、下受け業者さんに懇願し、これでどうだ!うちのやる気はいかがでしょう?的な「超」勝負の見積りを提出。

ところが結果は惨敗、やはりここは下っ端ノリピーじゃダメだ、もっと「上」まで到達しないと・・。そのためにはもっと内部情報がいる。ライバル会社の情報も欲しい。・・・この会社にもあの時のようなスパイが欲しい。

転勤前の本社時代に、おティンティンを使って甘い汁を吸いながらガンガン数字を挙げていったあの経験はもはや麻薬。ストップ麻薬、ストップ汁営業。つまりティンコ汁営業をしなければ、やはり私はそこんじょそこらの営業マンと変わらないのだろうか・・・。

麻薬は怖い(たぶん)

ティンコ汁営業も麻薬なのだ。

 

つづく