売れない保険屋さん

セールストークのネタになれば。

~第29話:予測不能なノリピー~社会に出たらパンツを脱ぎなさい。

~社会に出たらパンツを脱ぎなさい。

~第29話:予測不能なノリピー

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自転車操業を続けた結果、さすがにヤバいと思った私はノリピーと会うペースを少しずつ落として行った。それにノリピーが勤める巨大クライアントはすでに落としたのだからぶっちゃけノリピーにはそれほどまでの利用価値がなかったけど、「ノリピーが結婚するまで恋愛(期間限定)」をノリピーに持ち掛けたのは私だ。そして婚約者との結婚まであと2か月を切った頃、ノリピーの様子がおかしくなってきた。

「今すぐ来てくれ」

私の携帯が鳴る。電話の相手はノリピーの会社の上司。ゴルフ好きでアニキ肌で努力家でやさしくて、誰からも好かれるキャラの男性だ。名前をアニキとする。

「アニキさん、どうしました?」

「ノリピーの様子がおかしい」

イヤな予感がした。

「病院に連れて行ってくれ」

実は、アニキさんは私達の関係を知っていた。何度も3人で食事に行ったくらいだ。そしてアニキさんはノリピーの婚約者である社長の御曹司様と同期入社。くそマジメな御曹司様と比べると、気さくで圧倒的に信頼度が高いアニキさんは部下から絶大な人気があり、それを妬む御曹司様とは確執があった。いくら努力家で仕事がデキても、社長一族から妬まれて出世ができないアニキさんだった。

「俺は一生、平社員だなあ、わははは!」とよく言っていたが、内心は悔しかったと思う。そんなアニキさんは私達の事を応援してくれていたし、ノリピーを実の妹のように可愛がっていた。私としても「期間限定の恋愛」とは口が滑っても言えず、ノリピーとは一生結ばれない悲劇のヒーローをアニキさんの前では演じていたような気がする。

 「大量に飲んじまったみたいだ」

「マジすか」

なんとノリピーはこれまた平日の真昼間から精神安定剤を召し上がってしまった。それもけっこうな量をゴックンらしい。

「結婚したくない・・・」

そんなうわごとを言ってたようだが、来客用駐車場でアニキさんとノリピーと落ち合った私が「しっかりしろ!」と声を掛けると「ふにゃにゃにゃ~♡」「おいってば!」「ふなあああ♡」

 

(;゚Д゚)

(こいつもか・・・!)

えと・・・猫?

まあ、それはいい。猫のモノマネは女子力が高そうにも見えない事もないが、ぶっちゃけいい年のクセこいて、それはタダのバカだ。つまり、カンタンに言うとノリピーはパチンカスな上に根もカスで、さらにはメンヘラの気質があったようだ。

 

「今日は帰らせていいからあとは頼む」

そう伝えられ、ノリピーをカローラに詰め込むアニキさん。

(あの~。私、まだ仕事中なんすがどうしろと?)

(こんなの御曹司に見られたらどうすんのさ)

ま、仕方ない。とにかく逃げるように車を走らせ、病院に連れて行き、点滴を打ってもらう間に会社に戻り、業務のバツ子に仕事を丸投げし、他のお客さんや回るべき現場に適当な事情を言って病院に戻り、精神安定剤がある程度抜けたノリピーを回収して家まで送った。その後また会社に戻って潰れた半日以上の仕事をこなすといつの間にか深夜12時を回っている。その間もひっきりなしになる携帯。すべてノリピーからだ。

「えへへへ、痛いのが気持ちいい」

「手首から血が」

(;゚Д゚)

(お前はそっち系か・・!)

自傷癖があったのだ、ノリピーめ。

私がメンヘラに好かれるのかメンヘラにしているのかさっぱりわからないけど、深夜に車(社用車)を走らせ再びノリピーの家近くへ。

実家住まいな上、嫁入り前の女性だ。家庭訪問などできるワケもなく、一晩中、ノリピーの部屋の窓から私が確認できる位置に車を止め、携帯電話で延々とお話をする。いったいどんだけ携帯料金の請求が来るんだ・・。そして死なないまでも、冗談でもリストカットなどされると大変困る、頼むから俺を巻き込まないでくれ。マリッジブルーにもほどがあるぞ。俺たちは期間限定だったじゃないか、頼む、普通に結婚して行ってくれ。そして普通の幸せをつかむんだ。確かに私はそこんじょそこらのオトコよりギリギリだよ!って感じの生きてる感じがあって面白くは見えるかもしれないけど、ロクに将来も考えずにお金をジャブジャブ使ってまでして女を落としつつ成績を挙げて自己満足に浸るカスヤローは忘れてどうぞお願い致します。絶対に御曹司様と結ばれた方が金銭的にも幸せになるしそれがお互いの為なんです。

 

そんな私の心の叫びなど到底理解してもらえることもなく、こんな予測不可能な毎日が続き出した・・・。

つづく