売れない保険屋さん

セールストークのネタになれば。

~第7話:ひよっこ~社会に出たらパンツを脱ぎなさい。

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 ⑦社会に出たらパンツを脱ぎなさい。

~第7話:ひよっこ~

「今週末、女王様とご飯に行ってくるよ。」

聞けば女王の誕生日らしい。お酒も好きな女王はたびたび飲みに行っているが、女王の会社は接待などを全面禁止してた為、女王と酒の機会が持てる業者はほとんどいなかった。

(よし、仕込むか)

ボブ子から店や予約時間などを聞き出し、ボブ子にも協力を促す。

「サプライズやろうぜ、おもしろくね?」

接待が禁止な為、やるなら個人レベル。フレックスタイムのコアタイムなし、どれだけ働いても基本給のみの私に出せるお金はせいぜい3万円。

事前にお店へ連絡し、ぼちぼちのシャンパンとケーキの用意。こじゃれたイタリアンレストランだがそんなに高くない店で助かった。

女王は美人だ。少し小柄だがタイトスカートから伸びた足はピンヒールを履き、ふくらはぎの引き締まった筋肉がとても印象的で、40歳過ぎにも関わらず赤系色のスカートを好む。ちゃきちゃきのキャリアウーマンだが未婚。仕事に没頭して婚期を逃したとかなんとか聞いた事もあるがそんなのはどうでもいい。私のターゲットはこの女王なのだ。

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※適当にググったら雰囲気がそっくりの画像があった。もう少し強い赤というかワイン色のスカートを好むけど女王の雰囲気はこんな感じだ。

決行当日の金曜日、恩師の課長にこっそりと理由を伝え、仕事を早退してレストランで待機する。ちょうどいい具合にカウンターもあるので映画とかでしか見た事がない「アレ」をやる事にした。

(キタ!)

19時になり、ボブ子と女王がレストランに入ってくる。お酒を飲みながら、キャッキャッと話している。こうやって見ると普通の女子会だ。二人は仲良いなあと思って遠目のカウンターに座った私はなるべく顔を見られないように普通の客を装っていた。もちろん私もビールから始まり色々と飲んでいた。

順調に時間も過ぎて、そろそろ20時半だ。ボブ子と決めた時間だ。酔っているとは言え、ボブ子もぬかりはなく、ボブ子がカバンからプレゼントを取り出して女王に渡した。合図だ。

「ええ~うれしい~♪なになに~?」キャッキャ言いながら二人は盛り上がっている。そこへ店員さんがぼちぼちの値段のシャンパンとケーキを持ってテーブルに向かう。

「お誕生日おめでとうございます♪」店員が言う。

「ええ~!ありがとう。このお店、ケーキ出してくれるんだ」

「シャンパンもございます。お召し上がりください」

「ええ~!これもサービスなの~!?」

シュぽんっと抜いて、新しいグラスを渡してそれに注ぐ。

「赤がお好きと伺いまして」

 

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パイパー・エドシック ブリュット ボディガード 

というシャンパンで、こんな広告見たことある人もいるかな。

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 もうね、イメージにピッタリだった。赤で狂暴なワニのシャンパンだぜ。

そんなに高くないし、サプライズにはもってこいのワイン。

※持ち込みは失礼なのでお店に手配してもらった。

 「ああ~びっくりしたわ、ありがと♪」

というと店員がナイスアドリブを決めてくれた。

「これはボディガードというシャンパンです。」

「最初からお二人をずっと遠目でガードしている方がいます」

「しかもその方は開店から一人でずっとさみしく飲んでいます。」

「へ・・・・??」

「あちらのお客様からですwww」

出たー、ついに「あちらのお客様からです。」が出たー。アメリカ映画でおなじみのセリフでいつか言ってみたい、でもなかなかチャンスがないシーンだ(笑)

私と女王は目が合うと・・・

「ぎゃっはっははははははは!」

成功だ(笑)

「一緒に飲んでいっすかあ!?ハッピーバースデー!」

「おお~よしよし、誰かと思ったら、ヒヨッコ君かあ!」

「最近頑張ってるじゃないか!」

「はい、大変お世話になってます!」

 私は「ヒヨッコ君」と呼ばれていた。バリバリの首切り女王から見たら26歳の営業マンなんて誰でもひよこ、ヒヨッコだ。

 こうしてヒヨッコの私は見事に女王の懐に入り込む事に成功し、二次会のカラオケでも盛り上がり、今度は会社に黙ってこっそり飲みに行こうと約束までこぎつけた・・・・!ぴよぴよ。

女王よ、俺を甘く見るなよ?ぴよぴよ。

続く

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