売れない保険屋さん

セールストークのネタになれば。

⑤ヤクザはヤバいよ~酒もって来い~

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①から読んでいただかないとわかんないかもです↑

 

「今日は飲みたい気分だから酒もってこい」

 エリカを連れて来店したトドさん(50歳のヤ〇ザ)が言った。しかも2本だと。

(ここはスナックじゃないんだけど・・・)

在庫をチェックしてみるとサントリーのXOってブランデーが2本あったのでそれにした。

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ちなみに昼に酒屋で買うと5,000円くらいなのだが、夜の街では20,000円前後くらいが相場だ。なので「2本で40,000円です」と伝えてそれを2本テーブルに置く。

「今日はとことん飲むぞ。お前も付き合え」

何かいいことがあったのだろうか。もうちょっと高い酒もあったのだが敢えてこのランクの酒にしたにも理由がある。

最近、トドさんはツケで飲み始めたのだ。

「18万くらい貯まってるんだよな・・・」

マスターがボヤいてたのを聞いていた。確かに週2日ペースで来てはそこそこ高い酒を飲んでいた。エリカが暴れ出すから飲む時間こそ短いが、二人で2万円弱と言ったところか。決して高いバーではなかったのだが、決まって値段の高い酒を飲んでいた。

普段二人はカウンターで私もカウンター越しに接客するのだが、今日は店の奥に薄暗い照明に照らされた丸テーブルがあり、そこにトドさんとエリカが座る。私も座る。

ちょっと不安そうなマスターがアイスペール(氷が入った円柱のゴミ箱みたいなやつ)に氷を目いっぱい入れて持ってきた。マスターはどうせ今夜もツケだろうと思ってたと思うが、なかなか言い出せないみたいだ。(いったいこの二人の貸し借りってなんだろう?)と思っても面倒だから聞かない事にしていた。どうせヤ〇ザ絡みなんてロクな事じゃないだろうし。

そういえば、最近もうひとつ変わった事があった。トドさんが飲む間、営業妨害のように入り口通路に突っ立っていた「若い衆」もここ数回はいつの間にか居なくなっていたのだ。まあこれは願ったりの状況であるが。時期的に・・・福岡県かどっかのヤ〇ザの事務所でロケットランチャーとかが見つかった事件があった頃だったような気がする。関係ないとは思うけど、なんか軍事用とかすげーよね、と誰かと話した記憶もある。

さて、3人で飲み始める。エリカも最初からこのブランデーのロックだ。

「お前、仕事はどうするんだ?」

「ええ、ぼちぼち決めないとですね」

「(o^―^o)ニコ」

トドさんの彼女である沢尻エリカと佐々木希を足した顔をした22歳のエリカは相変わらずかわいいのだ。男二人の会話に交じる事なくただ聞いているだけだが、話の合間に時折見せる清楚な笑顔の相槌だけで場の雰囲気を和ませる。

だが、大事な事を忘れてはいけない。俺とエリカは「デキて」るのだ。昨日もホテルでHを済ませているのだ。エリカがこっそりチョンチョンとテーブルの下から俺の手に触れてくる。二人は完全に恋人同士だ。時折見せる(o^―^o)ニコも私に向ける時は若干のウインクを混ぜてくる。(ヤバいよ!)と焦る私を見てまた(o^―^o)ニコっと笑う小悪魔のようなエリカ。本当にかわいいのだ。こうなるとトドさんは完全にピエロなのだが、二人の関係に気づいてないようだ。

 

会話が進み、酒が進みだすと状況は変わってくる。

「お前、いい男だなああ、うちに来いれろ!」

「いやいや、何言ってんすか」

「ズバターン!がしゃーーーーん!」

トドさんはロレツが回らなくなり、エリカさまもお約束の後頭部打ちを披露しながら降臨し、テーブルの酒をひっくり返す。

「お前、仕事は男ならではでメンツが大事られ!」

「・・あはははは」(なんて言ってるかわかんねー)

「酒ついでうえええええええい!」

いつも通りの二人と思っていた。ロレツが回らないトドさんと酒乱のエリカさま。

このまま終わると思っていた。もちろんバレない自信もあった。いつもこの3人で飲んできたのだ。

しかしいつもと違う事がある。

ブランデー2本。

私はこの事件以来、ブランデーが嫌いになった。

 

もうちょっと続く

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