売れない保険屋さん

セールストークのネタになれば。

~第11話:猟奇的なボブ子~社会に出たらパンツを脱ぎなさい。

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⑪社会に出たらパンツを脱ぎなさい。

~第11話:猟奇的なボブ子~

「ヒヨッコくん(私)、今から来てもらえますか?」

月曜の午前中、女王から私の携帯に直接電話があった。

「お世話になります!・・・えと、どうしました?」

「・・いいから来て下さい」

呼び出しだ。女王の会社に来いと。だがしかしムカつくぜ、あの言い方。あれは取引業者をバシバシ首切りしてきた女王の話し方なんだよ。誰でもハイハイ言うこと聞くかっつーの、ちょっと仕事ができるからってカッコつけやがって、だいたい一昨日も金曜の夜から土曜の明け方まで俺の腕まくらでニャンニャン言ってたくせに。騎乗した時なんか40歳過ぎとは思えないプロポーションを惜しげもなくバインバインと披露しながら乱れまくったおしおきとして発射された俺の高射砲連射に耐えきれず、紅潮した顔を歪めながら、もうダメえええ、なんて言いながら崩れ落ちて行ったくせに。最後は後ろからお願いします!とおねだりしてたあのメスが!この私に向かって「来て下さい」だと?一昨日まで「おねがあああああい!きてええええええ!」だったアイツが?

・・・なんて一昨日の出来事を思い出しながら女王がいるクライアント先へ向かった。忘れちゃいけない、本当に忘れちゃいけない。いくら私が女王の上司であるキングと仲良くなったとは言え、女王は巨大クライアントのキーマンだ。普通の感覚じゃ呼び出しされた瞬間アウトなのだ。しかしながら私だって女王の家に通い始めて1年以上は経過している。おそらく誰よりも女王を抱いている。雨が降ろうが風が吹こうが生理だろうが抱いてきた。ボブ子と仕事次第では金曜以外も行った。そこまで女王を落とす事に徹底していた。これは仕事だ、このオンナだきゃあズブズブにしてやる。俺じゃなきゃダメなの~なんて言わせてやる!というか言わせてたんだけど俺ってばフフフフ。なんて夜の性活とおティンティンだけが私の心の支えだった。

(やべえ、なんかあったか?)という不安な気持ちを払拭したいばっかりに一昨日の出来事を必死に思い出し、自分を奮い立たせながら、ドキドキしながらクライアント、女王の元に営業車のカローラを飛ばして向かうと・・・。

 

 「ボブ子を病院に連れて行って」

 

「へ?」

 

 クライアント先に付くと玄関前に男性社員に抱えられた青白い顔したボブ子と女王がいた。

(はあ?ボブ子どうした?熱でも出たか?先週までは普通だったじゃねえか)

 

「あの~どうしました?ボブ子さんどうかしましたか?」

(病院なら会社の誰かが連れていくべきでしょ?俺は業者だぜ?)

 

 「なぜ私?御社の誰かが病院までお連れした方が・・・?」

 

「・・・!アンタじゃないとダメなの!」

 

(・・・やべえ、なんかバレてる!)

 

直感でバレたと感じた。その時の女王の目が尋常じゃなかった気がした。

なんとボブ子は精神安定剤を飲んでしまっていた。しかもなかなかの量をゴックンしてしまったようで朝に出勤したときは「〇〇(私)がいない・・・」などと私の名前を呼びながらブツブツ言ってたらしく、しまいにはワケのわからない言葉を連呼しながら最後は「へへへへへ」と笑いながら立てなくなってしまったらしい。月曜の午前中から。ありえんでしょ?確かにメンヘラの気配はあったボブ子だったけど「病的な彼女」というほどではなかった。いったいどうしたんだ?

 とにかくカローラにボブ子を乗せて病院へ行こうとしたけど、段々と正常に戻ってきたのでボブ子が住むマンションに連れて帰る事にした。その時ボブ子が言った。

「ねえ、私ってアナタのなんなの?」

・・・ああ、オンナが言う言葉で一番嫌いなセリフだ。なんでこんな安っぽいドラマみたいなセリフを易々と口にするんだ。確かにキッカケは仕事とは言え私はボブ子を落としたよ。歳も一緒だし、あれだけ難しい仕事を発注者と受注者という立場とはいえギリギリの納期の中で徹夜をしながらお互い助けあってこなしていくと「特別な感情」だって生まれるんだ。お互いに「仕事以上」の意思疎通がないとムリなんだよ。

・・・今、言われて改めて気付いたよ。俺もボブ子を好きになってたんだよ。信じてもらえるか?だいたい特別な感情がなきゃあんなに一緒にいられるかよ。

ボブ子のそのセリフで私のボブ子に対する気持ちは「好きだ」という確信に変わり、だけどそれと同時に「めんどくさいオンナ」に切り替わってしまった・・・。

私にとって、「めんどくさいオンナ」とは「生理的に嫌いな部類」に入ってしまう。

残念だけど、俺たちも終わりだね。今までありがとう。今、ボブ子の事が好きだと気付いたけど同時に嫌いになってしまったよ。もうこんな関係は終わりにしようね。

残念だけど、今ここではっきり言うよ、もうオシマイだ。(1.2秒)

 

「・・・好きだよ」

 

なんとまあ、とっさに私の口から出たセリフはコレだった。

これからも仕事は続くしボブ子絡みの大きな案件が動いてた最中だしメンヘラだと気付いてしまったからにはここできっぱり終わりにしてしまうと最悪の事態もありえそうだしそんな事があると全てが終わってしまうかもしれないしもうすぐ恩師の課長の昇進も決まりそうだしまずは穏便に、穏便に・・・今抱えているボブ子との案件を終わらせてからゆっくり話し合ったらいいじゃないか、それからボブ子からフェイドアウトしよう。そうしよう、きっとうまくいくさ(0.6秒)

 

「今日はゆっくり寝ておくれ」

そういってボブ子のマンションを後にし、女王に「大丈夫です問題ありません」と報告の連絡を入れ、帰社した。

だいたいなんでこんな事になったんだ?女王に私とボブ子の関係がバレていると思ったけど、ボブ子の私に対する片思いで済むかもしれない。私の事が好きになってしまってメンヘラになったって事で済むかもしれない。

問題は起こしたくない。とにかく原因究明が先だ。

 

私はその晩、女王と会う事にした。

 

つづく 

追記:よく覚えてるなと自分で感心します。実話っす。私は鬼畜ですね。反省してますスミマセン。