売れない保険屋さん

セールストークのネタになれば。

~第5話:勝算~社会に出たらパンツを脱ぎなさい。

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~第2章突入~

⑤社会に出たらパンツを脱ぎなさい。

~第5話:勝算~

 「異動だ」

10月という会社にとってキリがいい時に内示が出た。私は約3カ月もの間、会議室で過ごした事になる。

異動を言い渡された次の部署は「フレックスタイム・コアタイムなし」という会社にとって最高に都合がいい労務時間を最大限生かされる、まさに社畜の社畜による社畜の為の部署だった。

「24時間戦ってます」「運転しながらカップラーメン」「スーツは寝巻き」「ダンボールはフトン」「会社は寝床」しかしながら残業代は一切出ない。全員、基本給と役割給のみだ。そんな戦闘集団の超社畜集団だ。

ただ、売上数字は異色を放っていた。この戦闘集団が叩き出す数字は会社の中でも群を抜いていた。そんなチームから誘いが掛かったのは隔離時代にその課の課長と雑務を通して仲良くなったからかもしれないし、この課長は「あの」本部長ともかなり仲が良かったのだ。「あいつをください」と進言したらしく、今度の課長は私を拾い上げてくれた事になる恩師で、未だに感謝の気持ちを忘れた事がない。パンツを脱いだ結果、このチームへ異動し、この課長と巡り合えたという事にもなる。

私は仕事に飢えていたので、とにかく走り回った。寝る時間なんかいらないし、普通に仕事ができるって事がとてもうれしかった。工場の連中からも「おかえりw」だとか「脱獄したんか?w」などと言われながら過去に関係を良好に作り上げてた事も手伝って、通常では入らない工程をガンガン工場に押し込み、無理も聞いてくれた。他の先輩営業マンがビビるほど工場を手中にし、私を中心にゴリゴリと仕事が回り出したのだ。そんな状況のもと、メキメキと売上数字を伸ばしながら4年が経過し、私も26歳となった。

そして通算2回のパンツ脱ぎのチャンスが訪れる。

このチームには最強・最大のライバル会社があった。常にそのライバル会社としのぎを削っていたのだが、なかなか圧倒的な差を付けて勝つ事が出来なかった。

ある巨大なクライアント(仕事を発注する会社)のコンペが年2回あった。このコンペに2年連続、通算4連敗で負けていた。何が足りないのか。負けた理由は何か。分析するもとにかく情報が足りない。このクライアントのコンペ発注責任者は当時40歳過ぎのバリバリのキャリアウーマンだった。かなり仕事に厳しく、彼女に睨まれた業者は一切仕事を受注できなくなる程の権力を持っており、かなり恐れられていた。あの電通すら切った女だ。誰にも止められない女王様だった。そしてその女王様の部下には1人の女(26歳)がいた。この女も女王に業者の対応や悪口を、ことある事にいいつけては女王のご機嫌を取っている腰巻ヤロウだ。「虎の威を借りる狐」とはよく言ったもので、この女(26歳)もかなり恐れられていた。

「情報取ってくればいいんですね」

恩師の課長の役に立ちたい。この課長の為ならなんでもやれる。

私には勝算があった。

つづく

 

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