売れない保険屋さん

セールストークのネタになれば。

~第3話:からみ酒のローラ~社会に出たらパンツを脱ぎなさい。

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③社会に出たらパンツを脱ぎなさい。

~第3話:おら飲めやぁ・からみ酒のローラ~

おティンティンにトイレットペーパーを巻いたローラは愕然とした。

(これは・・・お通夜どころの騒ぎじゃねーぜ・・・)

 

バカな私が奇跡的に受かった超大手の会社で、通算3回パンツを脱いだ。そのうち脱いだパンツ2回が大ヒットとなり、社長賞を2度も受けるという偉業を成し遂げる。

バカでどん底、仕事から干された私の起死回生、3回パンツを脱いだストーリー。

 

ローラがおティンティンにトイレットペーパーを巻き付け、全裸でカラオケ部屋へ突入した瞬間、そこは牢獄だった。まるで生きる希望を失った死んだ目をした囚人たち数人(管理職連中)が「ただ生かされている」ような情景。しかし歌い出してさえしまえば私の抜群の声量でなんとかなる・・・!私は負けない!歌い続ける!飛び道具はおティンティンだ!しかしながら死んだ魚の目をした管理職メンバーがニコリともせず、私を凝視している・・・っ!タバコの煙が充満し、薄暗いカラオケボックスの中で生きる屍と化した先輩達が私を見つめている・・・っ!

その席の奥には中堅営業マンの生き血をすすり、ごますり・お世辞・ヨイショで持ち上げられてもなお、独裁者としての立場を利用し、深夜2時になろうと言うのに誰もこの場からの撤退を許さないこの空間の全てを統べる王・・!あいつだ、【本部長】だ。

(OKわかった。アイツを倒してやる。)

ハイテンションでカラオケ会場に飛び込み、おティンティンにトイレットペーパーを巻いたローラは歌いながら本部長との距離を詰めて行った。不機嫌そうにタバコに火をつける本部長。(あ~あ、アイツやっちゃったな)と死んだ目で見つめる管理職連中。苦笑いすら出る雰囲気もない。

ロ~ラ~。君を誰が・・・

Oh・・ロ~ラ~そんなにしたの?

Oh・・ロ~ラ~悪い夢は忘れてしまおう~。

(さあ盛り上がって行くぜ!!)

口に含んだビールをおもむろにティッシュにブーっと吹きかけ、求愛行動にも似た激しい腰振りダンスが始まると、すでにそこには無防備な姿のマイおティンティンがトイレットペーパーの茂みをかき分け、縦横無尽に踊っている。カンペキだ。そうだ、これぞこの会社の最終面接で言い放った「700万円稼いだ事、ありまぁぁぁぁす!」時代に培った代表的な技だ。これでウケないワケがない、何度もこれでストレスが貯まったおばはん連中を虜にして来たのだ。

(コレでどうだ!?効いてるか??)

自慢の奥義を繰り出すとそのわずか数秒後、異変が起こる。

 

「この愛も!捧げる~♪」

 

「演奏が停止されました」

 

なんだとおおお!? あまりのプレッシャーに耐えかねた某管理職の一人が演奏を止めたのである。

 

「しーーーーーん・・・」

 

無防備なマイおティンティン。全員の突き刺さる視線。そして本部長。

 

 「ああ?なんやお前」

 

本部長は完全に酔ってる上に元々、こわもてのおっさんだ。どっから見てもヤクザだ。いつもならひるむところだが、私は酔っていた。そして理不尽な時間の呼び出しにもかかわらず、友達との飲み会を中断しタクシー代まで払ってここまで駆け付けた。そして私は救世主ばりにこのおっさんを「倒す」気にもなっていた。

管理職連中が固まっている。(おまえら根性ないの!)酔ってる上に全裸の私は無敵だった。私は脱ぐと気が大きくなる癖もあった。

「本部長さんよ~。今度俺とサシで飲みましょうや」どぼぼぼぼ(ビールをつぐ音)

「おお?いいぞ?お前、覚悟しとけよ?」

「ああ?何をですか?権力っすか?本部長さんの権力っすか?」

「お前、いい加減しとけよ?」

「あああ?やるんすか?いいっすよ?」

今思い出すだけでもとんでもない絡み酒だった。連結決算では売上1兆円を軽く超す会社である。そんな会社で営業本部長まで上り詰めた男に新人3カ月の仕事もロクにしたことがない、「ままこ」な私がケンカを売ってしまったのだ。

この出来事は金曜日。人生で一番死にたくなるような土日を送り、月曜を迎える。真剣にこの町からの逃亡を検討したほどだ。事故って死にたくないけど巻き込まれて入院くらいしたいと真剣に考えたけど、すんなり会社に着いてしまった。運命の月曜日が待っていた。

つづく

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